オートで撮ってもいいじゃない

カメラは難しい。すべてオートで撮っている、という声をよく耳にします。

せっかく立派なカメラを買ったのに、どこもいじらず全部カメラ任せ…ということに、人はなんだか後ろめたさを感じるようです。

でも、オートで撮ることは何も恥ずかしいことではありません。撮っているうちにもっと知りたくなったら、表現したいことができたら、そのとき調べればいいのです。

おそらくわたしのみならず、写真業界の人間の多くは、そう思っているのではないでしょうか?
なぜなら裏を返せば、昔と比べてオートでさまざまなシーンが撮影できるようになった今のカメラは、とても素晴らしい技術の進歩の結果だからです。その恩恵を受けることが、悪いことのはずないですよね。

プロカメラマンでもオートで制御したほうが良いときには、積極的にオートを活用しています。
例えばわたしは、屋外で人物写真を撮るときに、マニュアルよりも絞り優先モードを使います。
絞りで背景のぼけ具合を調整したら、あとのシャッタースピードと感度は自動です。そうすることで開放的なロケーションでの人物の一瞬の表情を見逃さず、シャッターチャンスに集中することができています。

この作例は、満開の桜の中、モデルさんの髪がふわっと空気を孕んだ瞬間を捉えました。
モードは絞り優先で背景の桜を大きくぼかし、モデルさんのやわらかい表情と髪の動きが溶け合うように馴染んでいます。
この写真はモデルさんのお母さまにも好評だったようで、「あなた(娘)の写真の中で一番いいわ」と言われたそうです。
カメラマン冥利に尽きるお話でした。

オートかマニュアルかというのは、手段に過ぎません。大事なのは撮ること。できれば素敵な写真を撮ること!
写真にはたくさんの要素がありますから、素敵な写真に必ずしもマニュアル操作が必要というわけではないのです。

デジタルが主流になり、写真は記録容量いっぱいまで手軽に撮れるようになりました。
カメラの設定をいくら変更してもカメラは壊れたりしません。すぐ初期状態に戻せます。フイルムのときのように、失敗して「まったく何も写ってなかった」ということも普通ありません。シャッターを切っていまいちな写真ができたからって、誰も怒ったりしないはず。

そもそも、写真には絶対的な失敗や成功の基準などないのです。自分が写真に満足できたら、それが成功です。
誰かを撮ってその人や周囲の人に喜んでもらえたら、それも嬉しいですね。

そのときまで、いくらでも気後れせずにシャッターを切ってみてください。
オートでも、マニュアルでも、シャッター優先/絞り優先でも、何だって大丈夫。あなたにしか撮れない写真の宝物が、いつの間にかたくさんできているはずです。

さあ、明日は何を撮りに行きましょうか?

ひらはらあい

ポートレート専門のフォトグラファーです。
雑誌、広告、Webなど幅広い媒体で活動中。
まるで自然光のように見えるストロボライティングが得意です。

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